朝の通勤路。駅までの道で、前を歩くサラリーマンを1人、また1人と追い抜いていく。
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特段に急いでいるわけでも、競歩の大会に出ているわけでもないんです。
気づいたら抜いている。
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ダイエットを始めて半年ほど経った頃、そんな朝が増えてきていました。
当時の私は、その感覚を日記にこう書き残しています。
2022.04.12 今日の気づき ・歩く速度がどんどん速くなっている。 全身がバネのように感じる。 足を動かすのもスムーズ ・今日は16時間絶食をする日。朝ごはんは食べない。 ・新調した白のズボンがもうブカブカ。
今日の感想 ・背中のエクササイズはやる種目は少ないが単調というか長いというか、つまらない割にきつい。 なのでYouTubeで「お金の大学(複利について)」を観ながらやってみた。 数がわからなくなる以外は問題ないか?
「全身がバネ」
46歳のオジサンが書くには、なかなか攻めた比喩表現です。アスリートを目指す10代と見紛う日記です。
なのに後半では、背中の筋トレ中に資産運用の動画を観て回数を見失っています。複利の勉強をしながら単利の計算すらできていない。何をやっているんでしょうか。
まあ、それはさておき。
ただ、この「バネ」という感覚は、今振り返ってもはっきり覚えています。あれはいったい何だったのか。
「ダイエット過渡期のこの時期、自分の体では何が起きていたのか」を当時の記録の数字と照らし合わせながら深掘りしてみました。
その頃の私:数字で見る「ダイエット継続半年後」
まずは当時の記録から。私は毎回、体重計の画面と上半身の写真をカレンダーに貼り付けるちょっと人にはお見せできない気持ちの悪い「レコード(記録)」を続けていたので、数字はちゃんと残っています。
| ダイエット開始時(2021年10月) | 2022年4月12日 | |
|---|---|---|
| 体重 | 78kg近く | 65.9kg |
| 体脂肪率 | 24.3% | 14.1% |
約半年で−12kg。体脂肪率は10ポイント減。
やっていたのは、このブログで何度も書いている基本の4本柱だけです。
- 有酸素運動:インスタの動画を見ながらの宅トレと、一駅手前で降りて歩く通勤ウォーキング
- 筋トレ:自重で1日1部位(胸・腹・肩・脚・背中など)
- 糖質管理:朝は控えめ、食べる順番は糖質を最後に
- レコード:体重・体脂肪率・写真を記録
ジムには通っていません。4帖の部屋にヨガマット1枚です。
「バネ」の正体を分解してみた
調べてみると、この感覚は一つの原因で起きていたわけではなさそうです。少なくとも7つの変化が、同じ時期に重なっていたと考えられます。順番に見ていきます。
① 背負っていた荷物が12kg減った
当たり前すぎて「何を今さら」と言われそうですが、ここが一番大きいはずです。
12kgは、2リットルのペットボトル6本分。それを毎日、24時間背負って歩いていたわけです。そりゃ遅い。
ポイントは、脚の力がほぼ同じでも、運ぶ体重が約15%軽くなれば、同じ動作がそのぶん楽になることです。車で言えば、エンジンはそのままで車体が軽くなった状態。アクセルを軽く踏んだだけで、スッと前に出ます。
膝への負担も変わります。歩くとき、膝には体重の何倍もの力がかかると言われています。膝の痛みがある高齢の方を対象にした海外の研究では、「体重が1ポンド(約0.45kg)減ると、1歩あたり膝にかかる力が約4ポンド減った」という報告もあります。
これを私の12kgに単純に当てはめると、1歩あたり約47kg分。1日1万歩なら……計算するのが怖くなる数字です。あくまで単純計算なので、「それくらいの差があってもおかしくない」くらいに受け止めてください。
② 脚という「振り子」が軽くなった
日記の「新調した白のズボンがもうブカブカ」。ここも重要かもしれません。
歩くときは、脚を振り子のように前へ振り出しています。この振り子は、先っぽ(太もも・すね・足先)が重いほど振るのにエネルギーがかかります。脚におもりを付けると、胴体に同じ重さを付けるより疲れやすくなる、という話もあるそうです。
太ももやお尻まわりの脂肪が落ちて、振り子そのものが軽くなった。日記の「足を動かすのもスムーズ」は、たぶんこれです。
ついでに、内ももの擦れ合いも減りました。冬場にズボンの内ももが擦り切れていた皆さん、地味に痛いんですよね。
あれはどうやら脂肪からの静かな抗議だったのかもしれません。知らんけど。
③ 脳と筋肉の「連絡網」が良くなった
ここで一つ、自分でも意外だったことがあります。
当時の体重と体脂肪率から計算すると、こうなります。
| 開始時 | 4月12日 | 差 | |
|---|---|---|---|
| 体脂肪量 | 約18.9kg | 約9.3kg | 約−9.6kg |
| 脂肪以外の体重(筋肉・骨・水分など) | 約58.8kg | 約56.6kg | 約−2.2kg |
……筋肉、増えてない。
この頃の私は「筋肉をつけて痩せた」と思い込んでいましたのですが、数字を見る限りでは、正しくは「筋肉をほぼ守りながら、脂肪を中心に落ちていた」可能性が高いです。
減った12kgのうち約8割が脂肪。食事制限だけで痩せると筋肉も一緒に減りやすいので、これを筋トレで補った、と言っていい結果だと思います。
(家庭用の体組成計の数字は、それなりにブレるという前提付きです)
では、筋肉が増えていないのに、なぜ動きが良くなったのか。
筋トレを始めて最初の数ヶ月の伸びは、筋肉が太くなるより、脳から筋肉への指令が上手くなる部分が大きいと言われているようです。
▪︎一度に働く筋線維が増える
▪︎脳からの指令が速く、強くなる
▪︎動かす筋肉と、ブレーキ役の筋肉の連携が良くなる
体という機械は同じでも、動かすソフトウェアがアップデートされたイメージです。この頃やっていた「ランジニーアップ」や「スクワットスイッチアップ」のような、バランスを取りながら切り返す種目は、この連携を鍛えるのにぴったりの動きでした。日記には「最強にキツい」と書いていますが。
④ アキレス腱が本物の「バネ」になった
「バネ」という表現は、実はけっこう的確だったようです。
歩いたり走ったりするとき、着地でアキレス腱などの腱がグッと引き伸ばされ、その反動で縮みながら体を前に押し出しています。腱はゴムのように、ためた力を返してくれるわけです。筋肉の力だけで地面を蹴るより、ずっと省エネです。
トレーニングを続けると腱は適度に硬く、反発の良いゴムになっていくと言われています。そこへ体重が軽くなって着地の衝撃も小さくなる。ゴムの性能が上がって、乗せる荷物が軽くなる。そりゃ弾みます。
⑤ お尻・体幹・股関節が働き出した
お尻:お尻の筋肉は、歩くときに体を前へ押し出すエンジンの一つです。この頃、「仰向けで寝て腰を上げる運動(ヒップリフト)が一番効く」と日記に書いていました。前ももだけで頑張る歩き方から、後ろから押される歩き方に変わっていったのだと思います。
体幹:腹筋のトレーニングで胴体がブレにくくなると、脚で生んだ力が途中で逃げません。4月9日の日記には「腹筋のくびれが、自分が認識していた以上に締まってきている」とあります。力がまっすぐ地面に伝わって、まっすぐ返ってくる。これもバネ感の正体の一つです。
股関節:エクササイズの前後にストレッチを続けていたので、股関節まわりが動きやすくなっていました。股関節が後ろに伸びやすくなると、歩幅が自然に広がります。足の回転を上げなくても速く歩けるので、「気づいたら追い抜いている」現象が起きます。
⑥ 心臓と肺がパワーアップしていた
有酸素運動と通勤ウォーキングを半年続けると、心臓が1回に送り出せる血液の量が増え、筋肉の中のエネルギー工場(ミトコンドリア)も増えていくと言われています。
その結果、同じ速さで歩いても、息や心拍が上がりにくくなります。速く歩いているのに苦しくない。苦しくないから、さらに速くなる。日記の「どんどん速くなっている」の「どんどん」は、この好循環のことだったんでしょう。
⑦ 空腹と、ちょっとした自信
最後は、この日ならではの条件です。
この日は16時間絶食(前日の夕食から次の食事までを16時間ほど空ける)の日で、朝ごはんを抜いていました。お腹が空っぽだと、物理的にも気分的にも軽く感じます。私は糖質を多く摂ると眠くなって体が重くなるタイプなので、それがない時間帯だったのも大きかったはずです。
(※空腹のまま運動すると筋肉が分解されやすい、という面もあります。私は筋トレとセットでやることを前提にしていました。体質や持病によって向き・不向きがあるので、真似する場合は無理のない範囲で)
そして、ブカブカのズボン。翌日には目標の65kgを切る64.9kgを記録します。鏡の中の体が変わってきた自信は、姿勢や歩き方まで変えてしまうものです。人は調子に乗ると背筋が伸びる。オジサンも例外ではありません。
まとめ:「バネ」は7つの変化の合わせ技だった
| 変化 | 起きていたこと |
|---|---|
| ① 体重−12kg | 同じ力で軽く動ける、膝の負担も減る |
| ② 脚の脂肪が減った | 振り子が軽くなり、脚が前に出やすい |
| ③ 脳と筋肉の連携 | 筋肉を効率よく使えるようになった |
| ④ アキレス腱 | 着地の反動を推進力に変えられる |
| ⑤ お尻・体幹・股関節 | 押す力が増え、力が逃げず、歩幅が広がる |
| ⑥ 心肺機能 | 同じ速さが楽になる |
| ⑦ 空腹と自信 | 体も気持ちも軽い |
「痩せたから軽くなった」の一言で済ませていたら、ここまで分かりませんでした。
実際の経験からの気づき
1. 体重計の数字だけが「成果」じゃない
体重が停滞すると、本当に焦りますよね。私も漏れなく12月から1月にかけて停滞期にハマり、「なかなか70kgが切れない」と日記でボヤいています。
でも、体の変化は体重計より先に、歩きやすさ・階段の楽さ・ズボンのゆるさみたいな形で現れることがあるようです。数字が動かない時期でも、体の中では③の神経の変化や⑥の心肺の変化がちゃんと進んでいるかもしれません。
2. 「体感や雑感」も書き残してみる
私がこの記事を書けたのは、4年前の自分が「全身がバネ」なんて10代アスリート日記みたいな文章を書き残していたからです。
体重や体脂肪率と一緒に、一言でいいので体の感覚もメモしておくのが良いのかもしれませんね。
- 今日は駅まで何分で歩けたか
- 階段で息が上がったか
- ズボンやベルトの穴はどうか
あとで読み返すと、停滞期の自分を励ましてくれる立派な証拠になります。数字には出ない変化を残せるのが、文章の一番おいしいところかもしれません。
3. お尻と体幹を後回しにしない
胸や腕の筋トレは見た目が分かりやすいので、ついそちらに偏りがちです。でも「軽く歩ける体」を作るうえで地味に効いていたのは、ヒップリフトや腹筋・体幹の種目でした。ヨガマット1枚分のスペースでできるので、宅トレのメニューに1つ入れておくと、歩く感覚が変わってくるかもしれません。
維持期のいま思うこと:歩く速さは、老後の貯金
最後に、少し先の話を。
歩く速さは、高齢者の健康状態をよく表す指標として研究されていて、歩くのが速い人ほど長生きの傾向がある、という大規模な分析もあるそうです。
あの日の「バネ」は、40代後半で老後に向けた体の貯金を作れていた、というサインだったのかもしれません。
この日記の数週間前、私はこんなことも書いていました。
階段が昇り降りできて、電車で座る必要もなく、時と場合によっては走れる。これを70歳、80歳、90歳と維持していくだけで、老齢の人生はずいぶん違う景色となるのでは無いでしょうか。
「痩せること」はゴールではなく、軽く動ける体で歳を重ねていくためのスタート地点。あの朝、駅までの道で前の人を追い抜いていったのは、たぶん未来の自分のための一歩でした。
……とかなんとか、いつになくきれいにまとめてみましたが、背中の筋トレの回数はいまだにたまに見失います。複利への道ははるか遠く・・・・。

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